(貨物の遅延クレームに関する質問です。)

Q.
貨物が遅延した場合のクレームで勝つのにはどのようにしたらよいでしょうか? 勝った場合、損害賠償限度額は貨物全体の重量に対して19SDR/kgでしょうか? 予約した便に、航空会社の職員の不手際で貨物を載せることが出来なかった場合は、航空会社はクレームを拒絶することが出来るでしょうか? 航空会社側の不手際が原因で貨物が遅延した場合、航空会社は正当な理由なしに、クレームを拒絶することが出来るでしょうか? (2014.7.31)
A.
FedExやUPSのように配達日はおろか、配達時間まで契約に含めたサービスを展開している企業と異なり、既存の航空会社の運送契約はワルソー条約もしくはモントリオール条約に基づいて行なわれています。ワルソー条約やモントリオール条約の主要な部分は航空運送状の裏面に書かれています。

裏面の第9項に “Carrier undertakes to complete the carriage with reasonable dispatch …….”「運送人は相当なる早さ (reasonable dispatch) をもって運送を完了するようにする」と記されています。この条項により、航空会社は決まった日にち、もしくは、決まった時刻に運送を終わらせなければならないと言う契約条件で運送契約を締結したのではないと言う意味になります。説明する必要もなく、もし貨物が常識で考えられる期間よりも甚だしく遅れて配送された場合、航空会社は荷主が受けた損害を補填する義務が生じます。この場合の損害とは、遅延によって、貨物の商品価値が下がったと言う損害や、利益がこれだけ減ったと言う予想利益の損失は含まれずに、遅延によって、余分に掛かった電話代、トラック代などの諸費用が主体になります。

ワルソー条約やモントリオール条約では、生鮮食品が時間の経過と共に商品価値が減少してゆく生鮮食品が持っている固有の欠陥に対しては責任を持たないと規定されています。しかし、遅延による損害が航空会社側の重大な過失、もしくは、意図的な行為によって生じた場合、航空会社は貨物の重量に対して19SDR/kgを上限とした損害賠償に応じなければなりません。損害賠償金額の中に商品価値の減少は含まれていてはならず、懲罰的な金額も排除されます。余計に掛かった国際電話料金、余分に掛かった通関料、或は、余分に掛かった陸送費などが損害賠償の対象になります。貨物の予約は、貨物の配送について、その便に搭載すると言う確約ではなく、航空機の貨物スペースの最大有効活用のための資料にしか過ぎません。 しかし、もし航空会社側で重大な過失があり、航空会社の作為・不作為が遅延事故の原因となった場合は、航空会社は、掛かった余分の費用を補填しなければなりません。航空会社は重大な過失は無かったこと、また、損害を防止する為の必要な措置はすべて行ったことを証明しなければなりません。

一方、荷送人は航空会社側に重大な過失や意図的な作為があったことを立証しなければなりません。遅延損害のクレームは、いろいろあるクレームの中でも、特にデリケートなクレームであります。

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